milkteaのブログ

片想いの恋愛小説を書いています

モモさんの恋愛事情10


 モモさんは、リョウさんと付き合ってるんですか?


週末にLINEで送ったら、いつもすぐに返信をくれるのに、
モモさんの返信は2時間後だった。


 リョウさんとは実は微妙な関係なの。
ハッキリさせなきゃいけないんだけど、なかなか…。


 モモさんには他に好きなヒトがいるんじゃないですか?


思い切って直球勝負してみた。
僕は、とにかく、モモさんの力になりたかった。
そのためには、ユウさんとのことを聞くしかない。


モモさんの返信は1時間後だった。


 好きなヒトいます。
でも、片想いで、絶対に手が届かないヒトだから、
彼のことは忘れたいの。
 リョウさんは私に、その彼を忘れさせてくれる、って言ってくれたから、わたしも、リョウさんと新しい関係を築きたいのだけど、なかなかその一歩が踏み出せなくて。
 多分、彼を忘れたくないのだと思います。


 リョウさんは、確か、モモさんより少し年下だ。
新卒入社組だから会社では古株のほうで、営業企画部でも副部長というポストにいる。ユウさんと同期だったはずだ。ユウさんと同じくらい若手のやり手で通っている。一見遊び人に見えるが、実は噂はあまり聞いたことがない。ユウさんと同じくモデルみたいにスラリと背が高く細身だが、ユウさんのように誰にでも優しい人懐っこい雰囲気はない。切れ長の細い目はクールで、冷たい印象を与えなくもない。営業マンらしく礼儀正しくトークはうまいらしいが、営業マンにしては第一印象が冷たい気がする。ただ、口先だけではなく、本当に知識と実績スキルが高いからクライアントの信頼は厚いと聞いている。実際、お客様相談室にもかなり来ていて、お客様の声をしっかりクライアントに伝えることをしている。クールな外見とは裏腹に、先輩や上司にはイジられたりしていて可愛がられているのをよく見かける。
 ユウさんとは全く違う雰囲気だか、同じくらい
モテるんじゃないだろうか。


 
そうか、モモさんにそんなことを言っているのか。


 忘れさせる、なんてクールどころか、むしろ熱いじゃないか。


 モモさん、無理にわすれようとしなくてもいいんじゃないですか?リョウさんが忘れさせてくれるなら、リョウさんに任せたらいいんじゃないですか?


 あっきぃ、そう思う?
忘れられないまま、リョウさんと付き合ったりしていいのかな?


 リョウさんがわかってて、それでいいなら、いいと思います。リョウさんが忘れさせてくれたらいいと思います。


 ありがと。リョウさんと話してみるね。


 そんなLINEのやりとりから10日ほど過ぎた頃、
モモさんのまわりをウロウロしていた僕にモモさんが言った。


 あっきぃ、わたし彼とお付き合いはじめたよ。


 僕は寂しい気持ちと嬉しい気持ちと半々だったが、にっこり笑った。


 よかったです。


 モモさんも寂しいような嬉しいようなそんな笑顔だった。


 リョウさん、どうか、モモさんがあの人を忘れるようにしてください。妻子ある人を好きでいるなんてやめさせてください。


 リョウさんには言えないが、リョウさんを見るたびに僕は念じてしまう。




 今日も僕はモモさんの周りをウロウロする。
モモさんがリョウさんと付き合っていても、やっぱり、僕は、モモさんが大好きだ。
モモさんは今日もきれいだ。
モモさんは今日も可愛い。
モモさんの笑顔は今日も僕を笑顔にしてくれる。


 あっきぃ、おっはよ!
今日もお仕事頑張ろうね!


モモさんの甘い声に僕は、デレデレになる。


こんな片想いなら、いつまで続いたっていいと思う。


 いつか、リョウさんと結婚することになればいい。モモさんが幸せになるなら僕も幸せだ。
そういえば、最近、あの人を見かけることもなくなった。
 きっと、もうモモさんもあの人を忘れかけているはずだ………。



 その時まで、僕はご機嫌だった。
二人の距離は3メートル、廊下の端と端、
ユウさんはあの人と、モモさんは僕と、並んで歩いていた。どちらも笑いながら話をしながら歩いていた。なのに、その一瞬、時間が止まった。
 ユウさんとモモさんが見つめ合った。
どちらも立ち止まっていた。
先に気づいたのは彼女で、すぐにユウさんを振り返った。僕はモモさんを振り返ることができなかった。
 先に、ユウさんが歩き始めた。
笑顔はなかった。ひどく思いつめた表情で、隣にいる彼女の存在も忘れて、ひたすらモモさんを見つめてモモさんに向かって歩き始めた。あっという間に彼女との距離は広がった。長い足でカツカツと靴音を響かせて、今にも駆け出しそうな速さだった。
 そして、立ちすくむ僕とすれ違うところで、ピタリと立ち止まった。何か言ったのか、何も言わなかったのか、僕には分からなかった。再び、彼の靴音が響き、それは遠ざかって行った。聞こえなくなるまで待って、僕は振り返った。


 そこに、モモさんの姿はなかった…………。


 








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