milkteaのブログ

片想いの恋愛小説を書いています

モモさんの恋愛事情9


 浴衣姿のモモさんがアイスコーヒーをプラスチックのカップに入れて蓋をしてストローを差す。それからいつもの優しい笑顔でそれを差し出す。受け取るのは若い男性社員だ。モモさんに見惚れていた。


 今日は毎年恒例の会社の夏祭りだ。
といっても、僕もモモさんも入社1年目だから初めてのことだが。地元ではわりと大きな花火大会のある日で、会社のビルが花火をあげる川辺に近いので会社の駐車場を開放して地域に貢献する主旨のもと会社の敷地内で出店を出しているのだ。僕達お客様相談室では冷たいノンアルコールを販売している。係になったのが僕とモモさんだ。周りには焼きそばやお好み焼、チョコバナナや生ビール、焼き鳥の屋台もある。僕達はアイスコーヒー、アイスティー、アイス抹茶、ジュース3種というメニューで、恐らく集客は望めないだろうみたいな感じだった。なのに、モモさんの浴衣姿の効果は絶大で、ホントは生ビールが飲みたいはずの連中がアイスコーヒーを買いに来て、行列をつくる盛況ぶりだ。ナルホド、周りの出店が男子新入社員の担当だから仕方ない。
僕は、内心不機嫌だった。
今夜、お客様相談室にモモさんというキレイなヒトがいるってことが社内に知れ渡ってしまうからだ。
10ヶ月前に入社したモモさんの存在は同じフロアの人にしか知られていなかったというのに。


 モモさんは不思議と人を惹きつける魅力がある。
モモさんより美人で可愛い女子ならたくさんいるはずだが、モモさんを前にしたらどんな美人もかすんでしまう気がする。モモさんはいわゆる美人とは違うと思う。だが、女性も男性も、思わず見つめてしまうような魅力がある。色気、優しさ、柔らかな空気、そんなモモさんの全てが人を魅了するのだ。
 ユウさんとはどうなっているのか、僕にはわからない。知る術もない。だから気になってたまらない。だが、ユウさんだけを気にしている場合ではなくなっていることに、僕は、気づくべきだった。


 花火の打ち上げが始まる7時、僕達のカフェ屋台は閉店することになっていた。花火が始まった。お客様相談室の新入メンバーが片づけを手伝いに来た。その時、スルリと、営業企画部のリョウさんが、浴衣姿のモモさんの手を握り連れ去った。僕は、ノーマークだったから気づくのがかなり遅れてしまった。そういえば、営業企画部はお客様相談室とは仕事上かなり密接な関係にある。中でもリョウさんは、かなり、お客様相談室に出入りしていた。
だが、モモさんと個人的に近づいているのは気づかなかった………!


 「やっぱり、リョウさんはモモさん狙いだったね。」


 そんな声がした。
やっぱり!?
僕は、僕としたことが、ユウさんに気をとられるあまり、他の男の存在には全く気づいていなかった!


 数日後、お客様相談室はリョウさんとモモさんの噂でもちきりだった。



 でも、僕は、僕には、なんとなくわかっていた。
多分、モモさんはわざと噂になるようなことをしたんだ。全てはユウさんのためなんだ。


 










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