milkteaのブログ

片想いの恋愛小説を書いています

モモさんの恋愛事情2

なんてキレイなヒトなんだろう………!
初めてモモさんを見た時、僕はしばらく見惚れてしまった。
色白で手足が細くてスラリとした印象、白いブラウスに黒いスカート、クリーム色のカーディガン、
なんてことない普通の服装なのに、なぜかとてもお洒落で素敵だと思った。
フワっと柔らかな優しい笑顔で皆の前で挨拶したその瞬間に、僕は彼女に恋をした。


 皆忙しい時期だったから、あまり役にたってないヒマな僕が、彼女のお世話係になった。お世話係といってもPCやメールの設定、仕事に使う社内システムの使い方なんかを教えるだけだ。
 「わからないことがあったら、このアッキーに聞いて」
チーフがそう言って僕を彼女に紹介すると、
彼女は僕を見上げてニッコリ微笑んだ。
「はい、よろしくお願いします!アッキー先輩!」
きれいな可愛い声だった。
僕はたちまち耳まで真っ赤になって、ただ曖昧な相づちをうつことしかできなかった。
そんな僕に呆れながらチーフは仕事に戻り、
僕を真っすぐにみつめる彼女だけが僕の前に残された。
挨拶もロクにできないで、僕はボソボソとシステムの説明を始めた。無愛想だったと思う。
だけど、彼女はそんなことを全く気に留めない様子で、ニコニコと僕の説明を聞いていた。
フワフワ甘い香りがした。
華奢で、でもなんだか柔らかそうで、ドキドキした。
僕の説明に、素直にはい、と頷くのがたまらなくかわいくて、背だけやたら大きい僕を真っすぐに見上げる瞳がキラキラしてて、とにかく僕はあっという間に彼女を大好きになってしまった。


 秋月という僕の名を半分馬鹿にするみたいにアッキーと皆が呼ぶようになったのは、チーフがある日突然僕をそう呼んだのがキッカケだった。
僕はその呼ばれ方をあまり好きではなかった。
でも、モモさんに呼ばれるとニヤニヤしてしまうくらいうれしくなった。
モモさんのは、アッキィって感じだ。
そこには親しみや優しさが込められてる気がする。
皆のとは違うのだ。
それに、モモさんがアダ名で呼ぶのは僕のことだけだ。僕以外にも、タム(田村)マツ(松田)、タケ(武田)と呼ばれる人がいるが、モモさんは10ヶ月経った今でも、彼らのことは普通に名前にさん付けで呼んでいる。年下相手でも男性には常に敬語を崩さない。でも、僕には、僕だけには、いつからかすっかり心を許してくれているようなのだ。
 アッキィ!おっはよ!
なんて、言われるのは僕だけなのだ。


 僕はいつもモモさんを見てる。
モモさんはいつもニコニコしていて、楽しそうに仕事をしている。
誰に対してもいつも笑顔で優しい。
 入社して半年が過ぎた頃には、モモさんはすっかりウチの部署にはなくてはならない存在になっていた。
 仕事もできるし、いつも一生懸命にがんばっている。
 キレイで優しいから、男女問わずみんなに好かれている。当然、僕みたいにモモさんを大好きなヤツもいたりする。僕には分かる。ずっとモモさんのそばでモモさんを見てきた僕には分かってしまう。


 モモさんが誰かに恋をしてしまったことも…。


                                                                                             つづく




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モモさんの恋愛事情1

 僕の大好きなモモさんはとってもきれいなヒトだ。
すごい美人ってわけじゃない。
でも、なぜか女優やモデルのように見える時がある。
華がある、というのはこういうことをいうのだろうと思う。


 僕がモモさんに出会ったのは今からちょうど10ヶ月前のことだ。
僕は一浪して東京の大学に進学し、そのまま東京でシステム開発の会社に就職したのだが、毎日深夜まで残業、休みもロクにとれない忙しさにすっかり身も心もボロボロになってしまい、3年でギブアップ。
依願退職後、レンタルビデオショップやネットカフェの店員のアルバイトをしながら3年は東京生活を続けたが、30歳になるのを機に地元へ戻って今の会社に就職した。
 大学の専攻や前職での経験をアピールしたのにも関わらず、なぜか希望したシステム部ではなく、
最も苦手とする電話でお客様応対する部署に配属されてしまった。
 僕はもともと社交性が無く、無口で内気な性格なのだ。だから黙々とコンピュータ相手に仕事するほうが向いている。気の利いたことなんか言えやしない。当然、モテるタイプではなく、女のコを退屈させるのが得意(?)、彼女いない歴=年齢だ。
彼女が欲しいと思ったこともあまりない。いらないとも思ってないが。
学生時代は好きな女のコがいたりしたが、社会人になってからは女性はむしろ苦手になってしまった。
それは、僕が女性をイライラさせてしまうのがわかるからだ。


 そんな僕が生まれて初めて、いわゆるひとめぼれってのをしてしまったのがモモさんなのだ。


                                                                                                                                              つづく


 


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